新しいカルチャーやトレンドが生まれる街・渋谷。会場のテーマは、「サステナブルでオシャレな食」です。2020年から『ミシュランガイド』にグリーンスター部門が設置されるなど、食の世界においても重要視されている「サステナブル」。脱炭素アクションのプラットフォームである「Earth hacks」が中心となり、サステナビリティ・ネイティブなZ世代が参加するトークセッションや、地球環境を考える次世代の食クリエイターたちによる限定メニューの提供など、渋谷会場ならではの感度の高いコンテンツが満載です。
渋谷会場事後レポート
サステナブルで
オシャレな食
【Earth hacks】
生活者の脱炭素アクションを促進するプラットフォーム。
商品やサービスのCO2排出削減率(%)を表示する「デカボスコア」の普及など、
国・企業主体ではなく、生活者が楽しみながら脱炭素に貢献できる仕組みを提供しています。
【デカボとは?】
脱炭素を意味するデカボナイゼーションの略が『デカボ』です。生活の中で脱炭素への貢献を実感しやすいようにデザインしました。温室効果ガス発生源の3分の1は「食」に関係していると言われています。食料システムには改革が必要だと叫ばれる今、無理なく楽しくできる脱炭素、それがデカボです。
渋谷で考える「サステナブルでオシャレな食」
渋谷会場となった「JINNAN HOUSE(ジンナンハウス)」は、緑豊かな庭を囲むように、体にやさしい定食や日本茶が楽しめる「SAKUU 茶空」や、フードカルチャー誌『RiCE』編集部も構える、ミニマルな複合施設。
5月20日(土)と21日(日)、おからをアップサイクルする「OKARAT(オカラット)」や、世界初の循環型蒸留ベンチャー「エシカル・スピリッツ」、ヴィーガン対応のベイクショップ「ovgo Baker(オヴゴベイカー)」など、サステナブルな視点から食をリードするクリエイターたちが集結しました。
未来の食において不可欠な「サステナブル」という、ともすれば真面目になりがちなテーマを、おしゃれなカクテルやフードを味わいながら、楽しく語り合い、体感した2日間。
Z世代と語りあう「脱酸素と食」
1日目の13:00~14:00には、「(株)Earth hacks」とデジタルネイティブであると同時に、サスティナブルネイティブでもあるZ世代を中心に、身近な生活のなかのサステナブルを考えるトークイベントが開催されました。
「Earth hacks」とは、国や企業主体ではなく自主的に楽しみながらCO2削減できる仕組みを紹介している、脱炭素アクションのプラットフォーム。登壇したCEO関根澄人さんは、「脱炭素のためにこうしましょう」ではなく、あくまで「素敵な暮らしの結果、脱炭素になっている」ことが理想だといいます。そのためにも、商品やサービスを購入した際「どれだけCO2排出量を削減できたか」を表す新しい基準「デカボスコア」の普及を目指し、みんなが生活の中で脱炭素への貢献を実感しやすくしているのだとか。
関根さんがトークイベントを進めるにあたり、「強力な助っ人」として紹介したのが、Z世代向けの企画・マーケティングを行う「(株)seamint.」((株)ネオレアより商号変更)を、大学3年生の時に起業したというCEOの朝比奈ひかりさん。1998年生まれの朝比奈さんは、学校教育としてサステナブルやSDGsを学んできたことで“サステナビリティ・ネイティブ”と呼ばれるデジタルネイティブであると同時に、サスティナブルネイティブでもあるZ世代の代表です。
自分の二酸化炭素排出量を知る!
関根さんの軽快なMCとともにクイズ形式で「デカボスコア」を楽しく学んだ後は、参加者それぞれが1年間に排出している二酸化炭素量を「Lifestyle Calculator」でチェックするという試みも!(https://www.lifestylecalculator.com/earth-hacks)
各自スマホでQRコードを読み込み、ライフスタイルに関する12問の質問(約4分)に答えるだけで、自分の二酸化炭素排出量を知ることができました。
日本人の平均二酸化炭素排出量は、8t(トン)以下とされるなか、3t台の参加者が2名も! 聞けば、排出量3.09tだった男性は「シェアハウスに住んでいるので極力モノを持たないようにしています」、排出量3.42tの女性は「移動はなるべく自転車か歩くようにしている」と、それぞれの意識の高さも窺えました。
関根さんからは、排出量が少なかった参加者の皆さんへ景品として、とうもろこしのデンプン(ポリ乳酸)からできているDEW「CORNマスク」が進呈されました。
後半は、「脱炭素」を軸に、フードやスイーツ、お酒、ファッションなどを語るトークセッションが繰り広げられました。Z世代の参加者が、“気になっているフードロス”について「学食のランチで余った料理をお弁当にしてシェア冷蔵庫で購入できるシステム」を挙げたり、「スイーツを買うときにプラスチックのカトラリーを使わないで済むように、食べられるスプーンを自作している」というSDGsなコメントもあり、関根さんも都度感心していた様子。
「みなさんにCO2を測ってもらったら、ほとんどの人たちが僕より少なかったですし(笑)、みなさんがすでにやっている事や、当たり前だと思っている事が、実はCO2削減に繋がっているという事がたくさんあるんですよね。それをより“見える化”することで、さらに関心が強まって、自主的なアクションも高まっていくと思うので、今後もそういった“貢献を実感”してもらえるように活動していきたいです」
<話してデカボ>を実感した後は、<食べてデカボ>
“どれだけCO2排出量を削減できたか”を示す「デカボスコア」の重要性を学んだ後は、渋谷会場のテーマ「サステナブルでオシャレな食」を体現する次世代の食クリエイターたちを、それぞれの「デカボスコア」とともにご紹介。
昼はカフェ、夜は炭火料理も食べられる「SAKUU 茶空」では、サステナブルなコラボメニュー2種を販売しました。
1品目は、味には関係のない様々な理由で「規格外」とされてしまった“未利用魚”をミールキットにして販売する「Fishlle!(フィシュル)」とコラボした、1日25食限定の「デカボランチプレート、バゲット付き」。未利用魚のハーブオイルコンフィに、オーストラリアのシャークベイの自然の力でつくられた天日塩を使用したサステナブルな一皿です。
ひとことで未利用魚といっても、数種類の魚が盛り付けられ、噛み締めるたびに食感や味わいの豊さを感じます。「フィシュル」はミールキットを選択することで、デカボスコアは88%off。
2品目は、自然のままの海水を結晶化させる「天日塩製法」で、環境に負荷をかけない塩づくりにこだわるオーストラリアの「シャークベイソルト」とコラボした、「デカボガトーショコラ、シャークベイソルト添え」。
濃厚なショコラの甘みが、シャークベイソルトのマイルドな塩みと調和し、クセになる甘塩っぱさです。1度釜炊きしてから塩にする日本の塩と工程が異なり、「シャークベイソルト」は太陽・風・人の力だけで天日干しするため、日本への輸送エネルギーを差し引いても、デカボスコアは普通の塩に比べて60%offだそう。
100プラントベース(植物性)で、国内で作られるベイクショップ「ovgo Baker(オヴゴベイカー)」では、小さな子どもからベジタリアン、ヴィーガン、グルテンフリーまで対応可能なアメリカンクッキーを販売しました。バターや卵の代わりに、米油や大麦ミルクなどを代替して、デカボスコアは80%off。
ココナッツチャイやジンジャーセサミオートミール、シナモンダブルチョコレートなど、どれも魅力的なラインナップに、お客さまの選ぶ姿勢も真剣です。中には大人買いする方も!
「エシカル・スピリッツ」は話題のバーテンダー・野村空人さんを迎え、エシカル・スピリッツの3種のジンを使用したカクテルを提供。今回はカクテルのフルーツを「余すことなく使う」という考えのもと、オレンジをセレクトしたそう。
オレンジを分解し、ジュース、絞った後の「ハスク」と呼ばれる白い果皮まで、余すことなく使用した3種類のカクテル。
果汁にゼラチンを入れて色素だけを吸着させることで、味と香りは残した透明のオレンジジュースをベースにした「Freedom」、果汁を絞った後の「ハスク」と呼ばれる果皮をスパイスやハーブで漬け込み、ジンに溶け込ませた「Desire」、漬け込みに使用したハスクをさらに湯通し→乾燥→パウダー状にしてからキャンディー化し、カクテルに添えた「Revival」です。
ワクワクする未知の味わいは、“サステナブルを楽しく共有”するきっかけに。
「バーテンダーの業界でも、ジュースを絞った後の皮やハスクはゴミにせず、ちゃんとリバイブさせようという動きが主流になりつつあります」と野村さん。
「エシカル・スピリッツ」のデカボスコアは、日本酒造りの過程で廃棄されてきた酒粕や賞味期限の近づいたビールなどの廃棄可能性素材(未活用素材)を蒸留しているため、21%offです。
おから専門ブランド「OKARAT(オカラット)」では、おからクッキーや、かわいいパッケージが目を引いていたレトルトを3品展開。中でも「OKARAT CURRY」はご飯の代わりにおからを使用。大豆製品は、生産時の水消費量が牛を飼育する場合の1/8、温室効果ガス排出量(CO2換算)は1/85と、環境負荷の少なさから、デカボスコアは20%offです。
実は、世の中に出ているおからのうち、食用利用はわずか1%。足が早く、菌が繁殖することもあり、お豆腐屋さんもどうにもできず、年間約70万tが廃棄されているのだそう。環境負荷が少ないだけでなく、低糖質で食物繊維もたっぷり含んでいるおからを、食用としてお豆腐屋さんから買いとる「オカラット」では、仮に定期購入者が800人になれば、食用利用が1%から5%に上がるといいます。
美味しい食やオシャレなパッケージ、話題のアイテムによって、関心を持ち、自発的に「サステナブル」を選択できる時代。デカボスコアや貢献実感を上手に利用することで、それぞれのアクションが継続し、広まり、選択肢はさらに増えていくというポジティブな連鎖を体感できる二日間でした。