Tokyo Tokyo Delicious Museum2023

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Chef’s Interview

東京の料理のレベルは世界中どこも勝てないと思う。

ビクトル・ガルシア

ビクトル・ガルシア[バル・ボルティージョ・デ・サル・イ・アモール]

老舗スペイン料理店を営むスペイン人の父を持ち、2012年に「アロセリア・サル イ アモール」を 代官山にオープン。その後銀座、中目黒、丸の内にも店舗を広げ、その内2店舗でミシュラン・ビブグルマンを獲得する。2022年、スペインレストラン認定プログラムで4店舗が全て正式認定を受ける。

バル・ボルティージョ・デ・サル・イ・アモールはミシュラン・ビブグルマンを獲得する[サル イ アモール]の支店として2022年に中目黒にオープン。気軽に利用できるスペインバルをイメージしながらもちろん本格的なパエリアが食べられる。

「東京だと蕎麦は蕎麦屋、寿司は寿司屋に行きますよね。スペインだとその感覚で、パエリアを食べようとしたらアロセリアに行きますね」そう語るのは、東京にスペイン料理の店だけで四店舗を経営するビクトル・ガルシアさんだ。

「東京のど真ん中で勝負したいって気持ちはありました。辺鄙な場所だけど意外と流行ってるみたいな店より、業界に対して影響力のある存在になりたかった。父親の存在が大きかったので、せっかくだったら目立たなければいけない、という気持ちも正直ありました。やってやるぞ! みたいな感じで信じられないくらいとんがってましたね。どんどん丸くなりましたけど」そういって笑うビクトルさんだが、五年後には二号店として銀座 ラ・パンサ を、三号店として今回の取材場所となった中目黒 バル ポルティージョ・カフェテリア-バル を、さらに二〇二〇年には丸の内 バル・ボルティージョ・デ・エスパーニャ と次々にオープンさせている。

「僕もまだ四〇歳なので、まだまだ挑戦したい。とはいえ、乱暴に事業を拡大するタイプではないので…。
十年で四店舗はすごいですねってよく言われるんですけど、僕ら的には慎重にやってきたつもりなんです」米を主食とする国・日本において美味しいパエリアが受けないはずがない。そんな確信に近い予感は起業前から抱いていたというビクトルさん。試行錯誤を重ねる中で出会ったのが山形産の日本米である「はえぬき」だった。
「何回もいろんな米を試したんですけど、今のところ僕らははえぬきが好き。うち、結構高い温度でパエリアを焼き上げる感覚で作るんですけど、米が崩れないし、強い熱に負けないんです。でも一番美味しいアルデンテみたいな瞬間が短いかな。その手前は硬めすぎるし行き過ぎると柔らかくなっちゃう。そこにちゃんと着地できると、すごく美味しい」その独特の食感を誇るパエリアは本場のスペイン人にとっても好評だ。

お客には大使館関係者も多く「東京にいるスペイン人、全員来てるんじゃないですか( 笑)」。今や日本とスペインを繋ぐ架け橋となっているビクトルさんだが、それぞれの食文化の違いについてはどう思っているのだろう。
「スペインだとどこより美味しいスペイン料理が食べられるけど、そんなにバラエティはない。東京って世界レベルで各国の料理が食べられるのがいいところで、そこは世界中どこも勝てないと思う。あとは食べる側の感度が高くて「君の本気に応えてくれる」っていうのは、絶対的な東京の良さ。
今回出店させてもらうイベント( Tokyo Tokyo D e l i c i o u sMuseum)が、海外からのお客に対してそうしたことの気づきになってもらえたら最高ですね

→本編はRiCE5月号本紙に掲載しています(https://www.rice.press/