東京では、伝統的な江戸前料理をはじめ、日本中・世界中の様々な食文化を楽しむことができます。
本事業では、東京が誇る多彩な食の魅力を世界中の旅行者に広く発信し、実際に東京を訪れてもらうために、著名な美食家である浜田岳文氏にもご協力いただき、海外のジャーナリストや発信力の高い著名なシェフ、旅行代理店の方々に東京の食を体験していただきました。
「海外では体験できない『本当の日本食の味』」 「海外発祥料理の東京独自の発展」、「東京の食の多様性」という3つの大きなテーマを設定し、それぞれ都内の飲食店や食に関わるスポットを体験してもらいました。
1974年兵庫県宝塚市生まれ。米国・イェール大学卒業(政治学専攻)。 外資系投資銀行と投資ファンドにてM&A・資金調達業務とプライベート・エクイティ投資に約10年間携わった後、約2年間の世界一周の旅へ。帰国後、資産管理会社(ファミリー・オフィス)社長を経て株式会社アクセス・オール・エリアを設立、代表取締役に就任。 世界約128カ国・地域を踏破。一年の5ヶ月を海外、3ヶ月を東京、4ヶ月を地方で食べ歩く。2017年度「世界のベストレストラン50」全50軒を踏破。「OAD Top Restaurants(OAD世界のトップレストラン)」のレビュアーランキングで2018年度から6年連続第1位にランクイン。国内のみならず、世界の様々なジャンルのトップシェフと交流を持ち、インターネットや雑誌、ラジオなど国内外のメディアで食や旅に関する情報を発信中。2024年6月、自身初の著書「美食の教養 世界一の美食家が知っていること」をダイヤモンド社より出版。
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浜田岳文氏は、2018年以来、6年連続でOADトップレストランレビュアーランキング第1位の座を守り続けており、国際的に大きな影響力を有しています。青春時代は関西、その後アメリカ、フランス等への滞在を経験し、今では訪れた国は100カ国以上、世界中の料理を探求し続けています。しかし、暮らしの拠点に選んだのは、ここ「東京」。その理由について浜田氏は「東京には世界最高のレストランシーンがある。東京に住み、そして多くの時間を過ごすことを決めたのは、そのためです。」と語ります。
東京の食文化の特徴の1つが、世界でも類を見ないほどのレストランの多さです。
「東京の食文化がこれほど発展したのは、新しいレストランの開業しやすさが関係しています。例えばパリでは、既存のレストラン経営者から営業権を買い取る必要があり、新しくゼロから開業するのは非常に難しい。しかし東京では、その障壁が極めて低く、次々と新しいレストランが生まれます。さらに東京には、小規模経営のレストランが多くあり、10席にも満たない店が珍しくなく、料理人が一人、もしくはごく少人数で切り盛りすることも多い。このスタイルは、寿司や懐石料理に限らず、東京のフレンチやイタリアンでも見られ、規模を自由に決められるからこそ、シェフは料理そのものに集中し、質の高さを追求することができるのです」
こうした環境によりシェフたちは、料理の腕の研鑽に専念できることから、「彼らの料理には職人精神が根付いている」と浜田氏は強調します。「東京のシェフたちを特別なものにしているのは、職人技、つまり匠の技なのです。東京では蕎麦であれ寿司であれ、料理の技を極めることが何よりも重視される。東京のシェフは、経営よりもまず料理の完成度を突き詰めることに情熱を注いでいるのです。この職人精神が、東京の数多くのレストランでそれぞれ独自のスタイルとこだわりを生み出していると言えます。
一方で、世界的に日本食の認知が高まりながらも、海外で「本当の日本食の味」を体験できる機会はほとんどないといいます。「寿司や和牛といった日本食に世界中の人々が関心を持つようになりましたが、彼らが「本物」に触れる機会があるかというと、そうではありません。たとえばフランスには素晴らしい魚料理がありますが、伝統的には魚は加熱して食べるのが一般的で、生で食べる文化がありません。つまり、新鮮な魚を適切に管理しながらパリに届けることは難しいのです。しかし東京では、それが可能になる物流システムが整っており、新鮮な生魚を使った本物の寿司を楽しむことができるのです。」
東京の食文化は、料理人の職人精神、新鮮な食材を届ける物流システム、そして素晴らしい食材により支えられていると言えます。
東京では、寿司やラーメンといった旅行者から人気の高い料理の選択肢が豊富ですが、「むしろ、寿司やラーメンをすでに経験した人々にこそ、東京のレストランシーンの多彩さや奥深さをもっと探求してほしい」と浜田氏は語ります。
「東京には、日本料理以外にも、世界のどの都市にも負けないほどの多様なジャンルのレストランがあります。」例えば、東京のピザシーンは今、世界の食通たちの注目を集めています。「今や、世界中のフードジャーナリストやシェフたちが東京を訪れ、ピザを楽しんでいます。これは、非常に興味深い現象です。ナポリの伝統を忠実に守る店もあれば、日本の食材を活かした独創的なスタイルを確立している店もあります。ここにも細部へのこだわりと、完璧を追求する姿勢、つまり職人精神が息づいています。」
浜田氏は、東京の食シーンの魅力についてこう続けます。「パリやニューヨーク、バルセロナのような都市であれば、その街のレストラントップ10を挙げることは可能です。そして、そのうち5、6店については大多数が同意するでしょう。しかし、東京ではそれが不可能なのです。素晴らしいレストランがあまりにも多く、それぞれが異なる個性を持っているので、全員が同じ10店を挙げることなどありえません。高級レストランから、路地裏にひっそりと佇む隠れ家のような飲食店まで、東京の食シーンは、それほどまでに多様で、奥深いのです」
「今回は、世界で活躍するジャーナリストやシェフに東京の食を体験いただきますが、彼らは自国で味わうものと東京で味わうものの違いを理解できるはずです。そして、この体験が彼らの報道活動や彼らが関係する世界中の食関係者や旅行者にどう影響を与えるかは、計り知れません。ぜひ東京という街の食文化の奥深さを伝えられればと思います。」と、浜田氏は本事業への意気込みを語ります。
そして最後に、浜田氏は東京とこの街の食文化に興味を持つすべての人々にシンプルなメッセージを送ります。
「東京の職人たちがどれほどの情熱を持って食と向き合っているのか、それを実際に目の当たりにすることは、きっと素晴らしい体験になるはずです。ぜひ東京に来て、職人魂を体験してください」
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世界に誇る日本食、海外では体験できない「本物」を東京では味わうことができます。日本食の奥深さは最高鮮度の食材、高度な物流システム、そして料理人達の職人技によって生み出されます。
まず、日本食の象徴「寿司」を最高の技術で提供する「鮨さいとう」です。
齋藤 孝司氏の寿司について「米の扱い方、お酢の種類、そのなじませる時間、お米を炊いた後の酢の混ぜ方など、齋藤氏の寿司の要はシャリです。一粒一粒の米が酢でコーティングされているような感じで、酢が米の中まで染み込んでいないのです。そして魚に応じて高温なシャリと低温なシャリを使い分けています。握るまでの準備に特別な注意が必要です」と浜田氏は説明します。
また齋藤氏は、ネタとシャリが口の中で同時に溶けていく絶妙なバランスを真骨頂としています。「美しく見えるものには、必ずバランスがある。米と魚のバランスが取れているからこそ、齋藤さんの寿司は美しいのです」と浜田氏。
また、寿司には「流れ」が非常に重要です。一つ一つの握りが独立しているわけではなく、全体の流れの中で構成されています。浜田氏は「これはフランス料理やイタリア料理のコースと同じ考え方です。それぞれのネタを出す順番やタイミング、この小さな起伏や変化が大きな違いを生むとともに、最後に向かって盛り上がるように設計されています。」と説明します。
「齋藤さんは、その日の魚の状態に合わせて、切り方を少し厚くしたり薄くしたり、イカの場合は包丁を入れる量を調整したりしています。これこそ齋藤さんの職人技です。」
寿司を作るには多くの考えや知識・経験が必要ですが、天性の感覚など技術的な説明が難しい場合もあるとのこと。東京の寿司職人は日々研鑽しながら、自らの感覚を研ぎ澄ませ、東京に集まる新鮮かつ多種多様な魚を最高の寿司へと作り上げています。
また、産地直送の新鮮な本マグロをフルコースで味わえるのが「鮨 塩釜港 銀座 極」です。
本マグロの水揚げ量日本一を誇る宮城県・塩釜から本マグロを直接仕入れており、新鮮な本マグロを寿司だけでなく、刺身、ステーキ、すき焼き、太巻きなど豊富な品数で提供しています。最高級の本マグロのありとあらゆる部位を、熟練の技で余すところなく堪能できます。
本マグロは保存状態が悪いと本マグロの酸化した風味や雑味が出てしまい、今でこそ特にトロは高級食材ですが、冷凍など保存技術が発達するまでは下魚と呼ばれるほど、その地位は高くありませんでした。
しかし充実した物流網があるからこそ、東京では鮮度抜群の魚料理を提供できます。浜田氏によれば、「日本のように多くの種類の生魚を鮮度高く流通させる技術は他の国では実現できない。最高の寿司を味わうなら東京に来るしかない、というのはそういうことです。魚本来の素晴らしさを、実際に東京に来てぜひ体験してほしい。」と、浜田氏は強い想いを語ります。
物流と保存技術の進歩により、東京には日本各地から新鮮かつ多彩な食材が届けられるようになりました。そして、伝統的な寿司だけでなく、日本各地の新鮮な食材を特徴とした料理を、様々なスタイルや調理法で提供する飲食店が東京には数多くあるのです。
次に、日本の最高級の「和牛」を提供するのが「肉屋 田中」です。
オーナーの田中覚氏は精肉店の家に生まれ、幼い頃から肉に囲まれて育ちました。
「主に一般向けの価格帯の肉を扱っていたご両親が、低価格の牛しか扱えなかった苦い経験が、子供時代の彼の心に深く刻まれ、いつか市場で最高級の肉を買える人間になろうと決意したんです。」と浜田氏は田中氏の想いを教えてくれました。
「最高の和牛を仕入れ、お客様に提供することが田中氏の人生そのものと言えます。」
日本市場で手に入る最高品質の和牛を決める要素は3つあり、それは牛の品種、育て方、そして育てられた期間です。「今回は、通常28〜30か月程度飼育されるところ、54か月飼育された松坂牛と、50か月飼育された神戸牛の、いずれも未経産の雌牛が用意されています。長期肥育された牛は味わいがより純粋になるとともに、筋肉が緩み柔らかくなるので、肉の旨味を感じつつ、肉質が柔らかい状態になります。そして、田中氏自身が市場に足を運び牛肉の質を自らの目で見て判断し、自ら競りに参加して入札価格を決めます。」と浜田氏は説明します。
また浜田氏は「未経産の雌牛を45か月や50か月まで飼育するのは非常に難しいことです。10年前の日本では、このようなことはほとんど聞かれませんでしたが、現在、一部の農家が技術を駆使して、より長期間にわたり雌牛を飼育し、味を向上させることに挑戦しています。」と和牛の生産農家の技術力の高さについて強調します。
「しかし、このような高価格な牛肉は、採算が合いません。だからこそ田中氏は、20~30店舗もの飲食店事業を展開するなど、高級な和牛を提供するための事業の経営を、計画的に進める必要があるんです。」
最高級の和牛だけを提供することにこだわるもう一つの東京の店が、「焼肉X」です。
看板メニューであるヒレステーキは、丁寧に時間をかけて火入れを行うことで驚くほど柔らかく、フォークだけで簡単に切り分けることができます。また、牛骨と肉、牛の尾などを5日間かけてじっくりと煮込んだコンソメスープも、大変濃厚な味わいを引き出しています。
ステーキ、しゃぶしゃぶ、すき焼きなど、和牛の楽しみ方は一様ではありません。また、和牛の旨味を一層引き立てる薬味についても、タレに限らず、レバーはごま油と塩、牛タンにはレモンピューレ、ヒレには揚げニンニク、胡椒、わさび、山椒、塩などをお好みで組み合わせるなど、和牛には多彩な味わい方があります。
東京では日本各地の最高級の和牛と料理人の卓越した調理技術により、日本が世界に誇る本当の「和牛」を体験することができるのです。
伝統的な日本料理「すき焼き」を独自の調理法で提供するのが「すき焼き あさい」です。
すき焼きは、明治時代に普及した牛鍋にルーツを持つと言われる和牛を使った伝統的な料理の1つで、牛肉と野菜を醤油、砂糖、みりんで作った出汁で煮込みます。
具材には滋賀県サカエヤの近江牛を使用し、豆腐は柔らかな水が特徴の京都産、玉ねぎはその甘みで知られる兵庫県淡路島産、ジャガイモは2年以上寝かせて甘みを引き出した北海道産、さらに、すき焼きには欠かせない生卵は、黄身の甘さに特徴がある三重県産を使用しています。
また、お肉の厚さにあわせて焼き加減を絶妙に調整するなど、目の前で中居が1品1品丁寧に調理し、さらに生卵の黄身を崩さずに卵白のみをメレンゲ状に泡立てる独自の技法を用いて、美味しさを引き立たせます。
食材選び、調理法など細部までのこだわりは、まさに職人精神の現れと言えます。
職人技と日本各地の豊かな食材が融合した日本の伝統的な料理を、ここ東京では味わうことができます。
伝統的な日本食として長い歴史を持つ「蕎麦」を新たな高みへと導くのが「蕎麦 おさめ」です。
「江戸は当時、世界で最も人口の多い都市で、多くの人々が働き、そばは早く食べられる昼食として親しまれていきました。そんなそば粉は扱いが難しく、麺を打つ際に切れやすく、そば粉だけで十分な食感を出すのは本当に難しく、すぐにバラバラになってしまう。実際に試してみれば分かりますが、まとまらないんです」と浜田氏は説明します。
そのため、多くの蕎麦店では50%から高級店でも80%のそば粉に小麦粉を混ぜて使用しますが、麺の形は整う一方、そば本来の風味や香りは薄れてしまいます。しかし店主の納剣児氏は、100%のそば粉で最適な食感を生み出す技法を追求してきました。
「納さんには、それを可能にする技術があるんです。100%そば粉なのに、この心地よい歯ごたえと風味が両立していて、バランスが取れている。この食感と風味のバランスが彼が目指すところです。」と浜田氏は語ります。
「そばは、最初は何もつけずにそのまま試してください。その後、塩だけ、または山葵と塩を少しつけて楽しんでください。最後に、そばつゆにつけて食べるといいでしょう。麺自体の風味が豊かなので、つゆなしでも十分楽しめると思います。」
そば本来の味わいを職人技で体現する納氏。伝統的な味わいを守るだけでなく、日々技術を磨き続けることで、さらなる美味しさを追求し進化させていく姿勢は、まさに名店ひしめき合う東京で活躍する料理人の姿そのものと言えます。
日本各地の新鮮な食材の旨味を最大限に活かした日本料理を割烹スタイルで提供するのが「六本木璃庵」です。
通常アラカルトで料理を一品ずつ提供する割烹は、高級な居酒屋やカジュアルな懐石料理とも表現でき、リラックスした雰囲気で日本料理を楽しむことができます。
璃庵では日本の旬の食材を使用しており、コウイカと菜の花の酢味噌和え、京野菜「海老芋」、伝統的な煎り酒を添えたアマダイの鱗焼き、鰻の炭火焼き、ハマグリの汁もの、和牛のしゃぶしゃぶ、土鍋ご飯など、季節ごとに様々な料理を提供しています。
そして何より料理人の卓越した技によって、旬の味わいはさらに奥深く引き出され、その魅力が最大限に高められています。
「割烹」はまだ海外からは馴染みの少ないスタイルと言えますが、東京には数多くの割烹料理店があり、自分で料理を注文して、余すところなく和食の豊かさを堪能するには理想的なスタイルと言えます。
日本各地の旬な食材を多種多様に取り入れ、料理人の技によってその味わいを最大限に引き出す。六本木璃庵では、そんな日本料理の真髄を心ゆくまで堪能できます。
定番の日本食だけでなく、東京では海外発祥の料理が独自の発展を遂げ、人気を集めています。
まず、徹底的な細部へのこだわりが詰まったハンバーガー店「アルデバラン」です。
「ハンバーガーは西洋のものですが、嘉屋実シェフの集中力と献身的な姿勢は目を見張るものがあります」と浜田氏。「和牛を使ったパティを作り、ホットプレートでバンズを丁寧に焼き上げる。その精密さはまさに特別で、これほど素晴らしいハンバーガーを手がけるのは、彼一人だけ。圧巻の一言です。」
バーガーには最高級の和牛を使用し、嘉屋シェフは毎日届く肉を細かく吟味しています。浜田氏によると、「このお店は多くのバーガーレストランとは一線を画しており、決まったレシピに縛られません。その代わり、細部に至るまでシェフが調整を加え、その日の肉の状態に合わせて最高の仕上がりを追求しています。」とのこと。
看板メニューのバーガーは、甘辛い照り焼きソース、香ばしくローストされた玉ねぎ、とろけるチェダーチーズ、そして半熟卵を重ね、一口ごとに豊かな風味が広がります。それでいて、決して味が強すぎることなく、絶妙なバランスが特徴となっています。
「このハンバーガーの素晴らしさは、調和にあります。どの要素も特別に際立つことなく、見事な調和を保っている。個々の食材を食べているというより、ハンバーガー全体としての一体感を感じるのです。シェフの技術は調理に限定されているわけではありません。これまで築き上げてきた経験を通じて得た知識と技術のすべてを結集し、通常思い浮かべるハンバーガーを超えた総合的な食体験を提供しているのです。」
また、常にお客様の声にも耳を傾け、反応を観察し、スタッフを通じてフィードバックを受け取ることで、体験の質を向上させ、さらに美味しい一皿を提供しているとのこと。
「嘉屋シェフは一つのことに徹底的に打ち込むという点で、日本の職人魂を体現しています。」と浜田氏。
嘉屋シェフにとって、何より大切なのはお客様へ提供する最高の食体験です。浜田氏は「長時間の待ち時間を解消するために15分間隔で予約を受け付け、予約時にバーガーを事前注文するシステムを考案しました。お客様が店に足を踏み入れる前から、バンズを温め、グリルの温度を調整しています。そして、到着を確認するや否や、パティをグリルに乗せ、バーガーの組み立てを開始。人気のあまり、かつては長い待ち時間が発生していましたが、新しい予約システムの導入により、お客様が来店してからわずか10分以内には出来立てのバーガーを最高の状態で提供できるようになりました。こうした努力により、スムーズで心地よい食体験を実現しています。」と説明します。
匠の技と最高の食体験への想いによって、海外発祥の料理もまた、東京で独自の進化と発展を遂げていると言えます。
次に、イタリア料理に日本の食材を融合させ、東京のピッツァ文化を発展させたといえる、「The Pizza Bar on 38th」です。
バーカウンターは8席のみ、テイスティングメニュー形式で一切れずつ提供されます。浜田氏は、「8席(あるいはそれ以下)の小規模な店で独自の体験を創り出したいと望むなら、東京という環境は、特別にそれを可能にする準備が整っている」と説明します。
ピッツァ生地の小麦粉など基本的な食材は伝統的なイタリア産を使用しながら、カリフラワーやホタテ、ウニなど、東京で手に入る日本各地の新鮮な農産物や季節の食材を活かした料理が提供されます。
コースメニューの提供中には、「クラッシックなマルゲリータですが、ナポリ近郊のトマトと、高知のチェリートマトを使っています。生のトマトと缶詰のトマトを絶妙にブレンドする必要がありますが、その分、味わいは格段に豊かになります」。とダニエレ・カーソン総料理長自ら料理のポイントを語ってくれました。
「日本にはピッツェリアが数多くありますが、伝統的なナポリスタイルが主流です。しかし、カーソンシェフの料理は、日本の食材とイタリアの食材を調和させるなど、革新的で新しいスタイルです。これは東京という立地だからこそ実現できることです。」
また、浜田氏はこう続けます。「彼はシェフとして現場で活躍し続け、職人であり続けることを望んでいます。それが彼の心構えなのです。これはとても日本的なものだと思います。」
そして、「東京のピッツァ文化に革新をもたらしているのは、カーソンシェフだけではありません。多くの国際的な食通たちが、今ピッツァを求めて東京を訪れています。東京のピッツァシーンは世界から注目を集めているのです。」と浜田氏。
ピッツァの本場イタリアから東京に新たな風を吹き込み、融合しながら進化を続けるカーソンシェフも東京の職人気質を持った一人と言えます。
最後に、国際色豊かな東京のレストランの中で、開業からわずか3年でミシュラン三つ星を獲得した「SÉZANNE (セザン)」です。
ダニエル・カルバート総料理長は、イギリスで生まれ、ニューヨーク、パリ、香港など世界各地での経験を経て、今は東京で活躍しています。
「私達が使用する食材の99%は、日本各地の素晴らしい食材です」とカルバートシェフ。日本の新鮮な農産物や食材の活用に重点を置いており、食材を提供する日本の生産者達への感謝の言葉を綴った小冊子が各テーブルに置かれるほどです。
「彼の料理スタイルは進化を遂げています。香港時代の料理はより伝統的で、パイを多用し、非常にクラシックなフレンチでした。しかし今、東京では本当に新鮮な食材を豊富に手に入れることができる。そのため、彼の料理はよりシンプルに、より食材に焦点を当てたものになっています。」
例えば、愛知県産の鴨肉を使ったメインディッシュ。
「日本の北部は白いマガモで有名です。田んぼに降り立って稲を食べるため、ジビエでありながら非常に澄んだ味わいとなります。イギリスやデンマーク等で味わえるような鴨肉の野性味がないので、海外の方は驚かれると思います。」と浜田氏は説明します。
「日本人にとっても新しい発見になる要素が多いです。非常に独自のスタイルで、細部へのこだわりはまさに職人技を感じられます。このような新しいスタイルやアイデアは東京という土地だからこそ生まれてくることかと思います。」
これまでの経験をベースに仕入から調理に至るまで、その場その時のベストを尽くす努力を惜しまないカルバートシェフの姿も、東京に根付く職人魂を表していると言えるかもしれません。
野菜や魚介類など豊かで新鮮な食材が日本中から集まり、世界各国から注目される都市東京。
そこに息づく職人精神により、海外発祥の料理もまた東京の食の魅力として発展し続けています。
東京は、伝統的な料理と世界中の多様な食文化が交わる場所。多くの飲食店がひしめき合う中、料理人は知識と経験、そして独自のアイデアで料理を新たなステージへと昇華させていきます。
日本の伝統的な料理である焼き鳥を、革新的な方法で調理するのが「薪鳥新神戸」です。
ここでは、伝統的な炭火の代わりに、薪火で串を焼きます。オーナーの末富 信氏は、海外、特にスペインでの経験からインスピレーションを得たそうです。「長年培った焼き鳥の調理技術とスペインのアサドールの調理技術の融合、一種のフュージョンスタイルといえます。普通、焼き鳥には炭火を使いますが、ここでは薪火。そこに、100%日本の食材を使用しています。これは新しい試みです。新世代の焼き鳥店といえるでしょう。」と浜田氏は説明します。
薪火での調理により香ばしい香りが得られますが、薪には水分が含まれるため、皮はパリッと、中はジューシーに仕上げることが難しい。しかし末富氏と料理長の疋田 豊樹氏は、技術を獲得することでこれらの課題を克服してきました。また、秋田の比内地鶏や群馬の高崎地鶏など、薪火で焼くのに最適な鶏肉を見つけるため、日本各地を巡ったとのこと。
そして、日本の家庭でも食べられる「鶏そぼろご飯」も、まず薪火にかけて調理し、最後に鍋の内側に木を入れて蒸らすことで、香りを引き出します。「この素晴らしい香りは、薪火でしか出せないんです。」と浜田氏。
この薪火を使った調理と食材へのこだわりは、まさに職人精神の表れ。そして、日本の伝統的な焼き鳥に海外の調理法を取り入れ、日本各地の最適な食材を使用する、東京だからこそ味わえる一品と言えます。
次に、ペイストリー・シェフの背景を持つ「あずきとこおり」です。
日本の夏の定番「かき氷」。しかし、この10年ほどで、新世代のかき氷が生み出されています。「今では本格的なデザートジャンルとして、新しい高みに到達していると言えます。このかき氷は、冬でも楽しまれており、むしろ気温の低い冬の方が、氷が溶けにくいので適しているのです。」と浜田氏は語ります。
堀尾 美穂氏は、都内のフランス料理店で腕を磨いた後、7席だけの小さなお店を開きました。
「彼女の作品は、伝統的なかき氷より複雑と言えます。普通のかき氷職人にはパティシエの経験はありませんが、彼女はその点で違いがある。これはトッピングもそうです、小豆メレンゲやパイ生地をのせたかき氷など、非常に革新的です。」と浜田氏。
かき氷の要となる氷の質感は、水のミネラル含有量で決まります。日本の水は元々ミネラル分が少ないのですが、堀尾氏は湧水を使用した長野県の製氷業者にたどり着き、自身が描く食感を実現できる氷を手に入れることができたとのこと。
小規模な店を開業しやすいという東京の環境は、職人たちの独立を後押しします。そして独自の経験と技術で定番メニューを新たなジャンルへと昇華させるなど、料理人たちはここ東京で、自身の描く理想の料理を探求し続けています。
最後に、ヴィーガン料理のフルコースを提供する「FARO」です。
レストランの理念は「持続可能性」。日本各地の生産者から多くの食材を調達することに加え、陶器、カトラリー、グラスなどすべて日本の職人が手がけた日本製を使用しているとのこと。
小規模な店を開業しやすいという東京の環境は、職人たちの独立を後押しします。そして独自の経験と技術で定番メニューを新たなジャンルへと昇華させるなど、料理人たちはここ東京で、自身の描く理想の料理を探求し続けています。
パティシエの加藤 峰子氏は、2024年のAsia's 50 Best Restaurantで、「アジアのベスト・ペイストリー・シェフ賞」を受賞しています。代表作でもある「花のタルト」は、20種類もの季節の花やハーブを使って里山の風景を表現していますが、この鮮やかな花は日本各地の農家に直接依頼して栽培してもらっているとのこと。
現在日本各地では、何世代にもわたって受け継がれてきた農法や技術、そして里山が消えてしまうことへの警鐘が鳴らされています。環境や生態系だけでなく、食材を生み出す生産者の方々の持続可能性についても、強いメッセージが示されていると言えます。
海外と日本の食文化が重なり合い、日本各地の生産者や職人の技術力が結集する都市東京。
「持続可能性」は、東京という一大消費地が進むべき一つの未来の姿といえます。
料理人たちが優れた料理を提供するには、確かな物流システム、調理器具、食の市場といった普段消費者があまり目にする機会のない場所で働く、多くの人々の力が不可欠です。
今回は、その一部として東京の食文化を象徴する重要なスポットを訪問しました。
全国から東京に運ばれる食材の一大集積地「豊洲市場」。
東京で新鮮かつ多種多様な魚を楽しむことができるのも、豊洲市場のおかげです。
朝五時を迎えると、すでに豊洲市場の場内は活気に満ち溢れており、その中で仲卸人たちが、都内の無数の飲食店や鮮魚店などに届けるために、新鮮な「魚」を手際よく捌き、包装していきます。
「やま幸」の山口幸隆氏も、そんな仲卸人の一人。
「大学時代に父の手伝いを始めて以来、この場内で働き続けている」と山口さんは教えてくれましたが、還暦を迎えた今もなお大きな包丁を手に、巨大なマグロを豪快に捌き、顧客の要望に応えるためにどの部位をどの店に送るか的確に判断していく、とても重要な仕事の第一線にいます。
「世界中のお客様においしいマグロを届ける、一人の熱狂者でいたい。」と山口さんは語ります。
「そんな市場の最高の食材を仕入れ、最高の料理を作り上げるためには、料理人自身が頻繁に市場に足を運び、献身的な姿勢で食材と仲卸人と向き合うことが本当に大切です。」と浜田氏は説明します。
「鮨さいとうの齋藤孝司氏は、山口氏と強い信頼関係を築いた一人。「SÉZANNE」のダニエル・カルバート氏もまた、豊洲市場に足繁く通う料理人の一人で、旬の魚を確認しながら仲卸人と言葉を交わし、食材の味わいを最大限に活かすためには、どのように調理すべきかを見極めているのです。」
日本各地から魚が集まる「豊洲市場」。そこで働く人々の想いと技術力によって、都内では新鮮で安全安心、そして多種多様な魚を味わうことができているのです。
高度な物流システムに支えられ、都内の各市場へ送られる全国の新鮮な食材は、都内の様々な飲食店で味わうことができますが、それはレストランに限った話ではありません。
東京の「デパ地下」では、新鮮な魚、肉、野菜などの食材はもちろん、お惣菜、スイーツ、酒類、そして全国各地の特産品など、多種多様な商品を見て買って楽しむことができます。
銀座の大型デパート「松屋銀座」では、地下2階の生鮮食品売場と、地下1階の惣菜・菓子売場からなるデパ地下を展開していますが、生鮮食品売場には、新鮮な魚はもちろん、肉や果物などが見事に並んでおり、東京のデパートにいながら、日本各地の新鮮な食材を購入することができます。また、別のフロアには、ジューシーな和牛、揚げたてのコロッケや天ぷらといった日本の定番料理から出来立ての焼き菓子まで、つい手に取りたくなる品々で溢れています。
「作り立ての総菜やお弁当などを買う事もでき、食品バイヤーたちが選りすぐった菓子類は、お土産としても喜ばれる事間違いなしです。購入したお弁当類は、屋上で召し上がる事もできます。」と、松屋銀座の龍野さんは教えてくれました。
日本全国の食材や食品を楽しみながら探し求めることができるデパ地下もまた、東京ならではの食文化を体験できるスポットといえます。
「また、包丁を始め調理器具に関心のある人々にとって、「合羽橋道具街」は、ぜひ訪れたい場所の1つ。
料理人たちの御用達の場所として130年以上の歴史を誇るこの商店街は、800メートルにも及ぶ通りの両側に、調理器具の専門店が軒を連ねています。プロの料理人向けから家庭向けまで様々な調理器具を扱っており、料理人自ら足を運び、調理道具を買い求める姿が非常に多く見受けられますが、海外からの旅行者にとっても人気なスポットになっています。
「キッチンワールドTDI」は、家庭用調理器具からプロ用機器まで扱う総合調理器具店で、箸置き、卵焼き器、酒器、抹茶関連商品といった日本独自の調理道具の他、様々な国から輸入された調理器具も店内に並んでいます。今回は特別に、広報の稲葉さんにお話をお伺いしました。
「直輸入ならではの調理器具の品揃えは、合羽橋で一番を誇ります。最近では日本人だけでなく、海外からのお客様も増えていますね。」と、日本の調理器具に対する旅行者の関心の高さが伺えます。
また、通りには包丁の専門店も多く並んでおり、洗練されたデザイン、美しい刃、滑らかな切れ味が人気です。
今回訪問した「幸人刃物」は、「お客様一人一人の希望をヒアリングしてご提案した、【最高の一本】を気に入っていただけた時が何よりの幸せです。」と教えてくれました。
食べるだけにとどまらない、日本の伝統と技術が詰まった調理器具を探し求められる合羽橋道具街もまた、東京の食文化を体験できるスポットと言えます。
江戸切子工房「堀口切子」の代表、堀口徹氏は、2002年に伝統工芸品として正式に認定された江戸切子の技を、三代にわたり受け継いだ歴史と教えを、現代に受け継いでいます。
堀口氏や三澤世奈氏をはじめ江戸切子の職人たちは、何時間もかけて繊細な切子を丹念に制作しています。「私達の作る江戸切子は、顧客が器を使用して初めて完成するよう設計している。つまり作り終えた時が完成ではなく、使われた時に完成を迎えます。飲食店向けに制作する場合は、飲食店の方々と直接会話し、どのような台に置かれたり、どのようなしつらえの中で器が使用されるのか、利用シーンを綿密に打ち合わせながら最も美しく見えるように器を設計します。」と堀口氏は説明してくれました。目の前でグラスにお水が注がれた時、江戸切子は最も美しく輝きを放ちました。
また、「カットを入れることで、見た目の美しさだけでなく、持ちやすさや滑りにくさなど、機能としても意味のあるデザインを意識しています。鮨さいとうさんでお使いいただいている器などは、口元にもカットの手を加え、今までにない口当たりを目指しています。」とのことで、作品の美しさだけでなく、利便性や快適な使い心地まで計算されています。
東京の伝統工芸の中にも職人魂が深く根付いており、こうした多くの職人達の想いと日々の研鑽により東京の食文化は支えられていると言えます。
2025年1月14日。多くの人々で賑う渋谷スクランブル交差点を臨む会場「manoma」において、“Tokyo Artissense: A Female Chef Collaboration”と題したイベントが開催されました。企画監修を務める浜田氏の呼びかけに応じて、東京を代表する女性シェフ3名が集結。リレーのようにバトンをつなぎながら一夜限りの特別なコースを創り上げました。
タイトルの「Artissense」とは、“Artisanship”と”Essence”を組み合わせた職人技の本質を表現した造語で、イベント冒頭には「東京の食文化を一言で表すなら、それは『職人技』です。」とタイトルに込めた意味と開催趣旨について浜田氏は説明しました。「東京には鰻や蕎麦をはじめ、一つの道を極めた店が数多くあります。そうした店舗を支える職人技は、東京のDNAに刻まれているのです。そして、この3名の日本人シェフたちは、まさにそれぞれの手法で職人技を体現しているのです。」
世界で活躍する箏奏者・明日佳氏が奏でる琴の音色と、ピアニスト・作曲家・DJとしても活躍する野崎良太氏(Jazztronik)が織りなすピアノの調べで幕を開けました。
最初の3品を手掛けたのは、「été」オーナーシェフの庄司 夏子氏。
東京に生まれ育ち、地元の高校で食の基礎を学んだ後、代官山の名店レクテで研鑽を重ね、わずか24歳で独立し、スイーツの専門店「été」をオープン。2020年「アジアのベストレストラン50」において「ベストパティシエ賞」、2022年には「アジアの最優秀女性シェフ賞」を受賞した実力派シェフです。
コースの幕開けを飾ったのは、庄司シェフの真骨頂とも言える「étéシグニチャー ウニのタルト」。滑らかで濃厚なウニは、甘いチーズ風味のタルトと見事に調和しています。
コースの幕開けを飾ったのは、庄司シェフの真骨頂とも言える「étéシグニチャー ウニのタルト」。滑らかで濃厚なウニは、甘いチーズ風味のタルトと見事に調和しています。
続く2品目は、東京湾のカツオ、バジル、ヘーゼルナッツのタルタルを詰めたレモンの器と、それを覆う蓋には黄色ズッキーニと柑橘の粒が並べられており、まるでアート作品のような「ポメロフラワー」。
そして最後を飾った「伊勢海老のパイ包み焼き」は、フレンチの伝統的なレシピに、和の柚子の香りを効かせるなど庄司シェフの発想と技術力が詰まった圧巻の一品。この伊勢海老もまた東京湾で揚がったものを使用しており、東京の豊かな海の幸を示すものとなりました。
「パイ包み焼きのような伝統的なレシピ、特にパイに関しては正確に仕上げるのが容易ではありません。内側と外側との仕上がりを両方完璧にするのが難しく、常にこの課題と向き合わなければなりません。」と浜田氏は説明します。
次のバトンは、同じく東京出身の矢嶋 純シェフへと渡されました。
秋葉原のラーメンの名店で技を磨き、その後、女将として創業した店がミシュランビブグルマンを獲得。2019年には息子と共に、かき氷専門店を立ち上げ、そのわずか4年後にはラーメンとかき氷という異なる世界を融合させた独創的な割烹スタイルのラーメン店「純麦」を開業しました。
本イベントで提供するラーメンには東京産の食材である「東京しゃも」と「東京 X」を使用しました。東京は全国各地から届く新鮮な食材の集積地として知られていますが、矢嶋シェフの一杯は、東京が活気ある生産地であることを示しました。
「彼女は上質な豚肉や鶏肉などをふんだんに使い、スープを仕立てています。」と矢嶋シェフのラーメンについて浜田氏は説明します。「深い味わいを持ちながら、主張が強すぎることなく、見事なバランスを保っていますね。」と参加者からも声が上がっていました。
矢嶋シェフは、激戦の東京ラーメン界でも卓越した技術をもってすれば、男女関係なく勝負できることを体現していると言えます。
ふわりと舞い落ちる削り氷に、みかんと金柑のトッピングから新鮮な果実の風味が広がるかき氷には、「こんなに食感がふわふわとしたかき氷を食べたことがない。冷たさを感じさせない技術も素晴らしい」との声も。
矢嶋シェフは、奥深い味わいのラーメンと新食感のかき氷を組み合わせるというユニークなスタイルを生み出しました。異なるジャンルの組み合わせは、東京の食の魅力をさらに広げていく、新たな可能性を示しています。
最後の2品を担当したのは、イノベーティブイタリアンレストラン「FARO」の加藤 峰子シェフ。
同じく東京出身の彼女は、日本だけでなく世界に名を響かせています。イタリアで10年に渡り、数々の名高いミシュラン星付きレストランでペイストリーシェフとして腕を振るい、「ゴ・エ・ミヨ2022年ベストパティシエ」、「LA LISTE JAPANESE AWARDS2024 TOPペイストリーシェフ」、そして「アジアのベストレストラン50」が選ぶ「2024年アジアのベストペイストリーシェフ」など、輝かしい功績を有しています。
最初の一皿「薔薇と檜とアーモンド」は、見事な調和で森の中にいるような感覚を表現しています。
滑らかで柔らかなソルベの上には薔薇の花びらが舞い、その下には檜の香りとアーモンド、そして東京産の苺が顔を覗かせています。
始まりと呼応するように、特別なコースはタルトで締めくくられました。
美しい約20種類の花やハーブが花束のように飾られた「日本の里山の恵み 花のタルト」は、加藤シェフいわく“食事の最後に官能的な瞬間を香りや食感で表現しました”とのこと。
加藤シェフのタルトの魅力は、見た目の美しさだけでなく、食べた時の豊かな香りの体験にあります。加藤シェフが大事にしたいと願う日本の里山の風景が広がっていました。
コースが終わると、浜田氏を交えた3名のシェフによるトークセッションが行われ、料理に込めた想いやこだわり、東京で活動する理由、東京の食の魅力などについて語り合いました。
本イベントの料理に込めた想いやこだわりついて
庄司シェフは「生産者の丁寧な仕事に支えられており、東京の食材が世界に誇れるものであることを再認識する機会となった」と話し、矢嶋シェフも「東京しゃもを使用することで、スープに野性味な味わいが生まれたこと」を強調、加藤シェフは「日本在来の檜や東京産のイチゴを使用することで、食材の香り高さや森林保護の重要性」について語りました。
さらに東京で活動する理由や東京の食の魅力について
庄司シェフは「東京には10席以下の小規模でこだわりの強いレストランが多いこと」を掲げ、矢嶋シェフも「世界各国から集まる場所で、自分も頑固な気持ちでやっている」と庄司シェフの意見に同意しました。加藤シェフは「日本の食の中でも東京には一つを深く掘り下げる土壌がある」点を挙げました。
海外から来るお客様に対して
庄司シェフは「お客様へのヒアリングをしっかりして、バックグラウンドに寄り添うことを大事にしている。その中でも自分のテイストをバランスよく取り入れることにこだわりを持っている。」と説明。矢嶋シェフは「海外からも予約が入るようになってきており、フレンチやイタリアンのようにラーメンというジャンルが海外に受け入れられていることを感じている。動物系が全くNGのお客様には、事前に情報をもらって対応したこともあり、どんな人にも喜んでもらうきっかけにしたいと思っている」と語りました。加藤シェフは「近年、自分が作るデザートのテーマは“普遍”としている。そのテーマから環境問題にフォーカスし、誰もが食べられるデザートとして美味しいプラントベース・グルテンフリー・シュガーフリーのものを作ってきている」と想いを伝えました。
このほか、東京は職人気質を持ったシェフが多いからこそ、食の魅力を世界にどのように発信していけば良いかという課題を抱えていることや、環境変化による食材調達の課題などについても語られました。
参加者からは「東京にも良質な食材があることに驚いた」、「今回のようなイベントを通じて女性シェフが活躍できる場が増えることは素晴らしい」、「女性シェフも男性シェフと同じように料理ができることを示した」、「海外のフードイベントでは料理を提供するだけのものが多い中、本イベントでは、音楽を通じて日本の文化を体験したり、シェフの料理に込めた想いを聞ける機会があったことは素晴らしい」との声が上がっていました。
3名の女性シェフのコラボレーションにより、本イベントでは東京の食文化の真髄である「職人技」と、東京の食の未来を見据えた新たな可能性を示しました。