Tokyo Tokyo Delicious Museum2023

2023

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Japanese

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長谷川在佑

長谷川在佑[傳]

1982年、東京都出身。神楽坂で芸者をしていた母のもと美味しい日本料理に触れながら育ち、高校卒業後は神楽坂の老舗料亭[うを徳]で5年間修業。2007年[傳]を開店。
豊富な食材や日本独特の文化を大切にしつつ、遊び心ともてなしの精神に溢れた「新しい形の日本料理」を体現。2022年「アジアのベストレストラン50」で1位を獲得。
Zaiyuhasegawa

長谷川在佑さんが店主を務める外苑前の日本料理店[傳]は、近年はミシュランガイドの2つ星を維持し、2022年には「アジアのベストレストラン50」第1位を獲得するなど、都内屈指の「予約の取れない店」として知られる。
名実共に現在の日本料理のトップランナーからは、現在の“東京の食”は一体どう見えているのだろうか。

長谷川さんは、本田直之さんとのコラボレーションという形で本イベントに参加されるわけですが、〝東京の食〞について、どんなイメージをお持ちですか?

長谷川 僕の中ではわりと、日本料理は 〝京都〞という意識があって。京都料理も東京の料理もひとつの郷土料理と言えるのかと思いますが、東京の料理に関しては、もともとあった江戸料理が現在の形に少しずつ変わっていったわけですよね。そしてその進化の過程で、お鮨、天ぷら、そば、鰻といった庶民の食文化がどんどんクリエイティブになり、いまや東京に海外の食通達を引き寄せているわけです。
僕はもともとの修行先が江戸料理のお店だったこともあり、そこはベースにありながら、今の〝東京の料理〞を表現していくことができればいいなと思ってるんですね。なので今回、直さんがプロデュースする特別企画には監修という形で関わることになりますが、素晴らしい職人さんの皆さんとご一緒できるのを楽しみにしています。

東京都が主導するイベントで、東京の食の魅力を国内外に発信することについては、どのように感じているのでしょうか。

長谷川 海外からのインバウンド需要を高めることももちろん大切なのですが、僕としてはやっぱり、もともと日本に住む方達に、もっと食の豊かさだったり、食の大切さや文化を知ってもらいたいなって想いが強いんですね。
僕の根本的な願いは、『自分の好きなお店はここ』と言える人間がもっと増えて欲しいんですよ。そう聞かれてパッと5店舗を挙げられる人って、意外と少ない気がするんです。もちろんね、人それぞれ、ご家庭それぞれに、仕事が忙しいとか時間がないとか、あまり外食できない理由があるのかもしれないですけど、高価な食事だけがいいものでもないので。
今回のイベント全体が、食に対する興味と、食の大切さをもっと知ってもらうきっかけになればいいなと思います。

長谷川さんは東京でお店を構えることの意義を、どのように考えていますか?

長谷川 僕が東京でお店をやる理由はとてもシンプルに、東京が生まれ育った場所だからですね。
どこでお店をやるのも決して簡単ではないですし、地方には地方の良さがあるのも知ってるけど、僕は自分の故郷を大切にすることは、お店をやるにもとても必要だと思ってて。世界中いろいろ行ったり、日本の各地方行ったりするけど、住むならやっぱり東京に住みたいなって僕は思う。
もちろん東京でお店をやる大変さもあるし、楽しさもあるんですけど、なんていうのかな…東京とか、ニューヨークとか、世界中にある他よりも明らかにスピードの速い街って、その街ならではの面白さがありますよね。

→本編はRiCE5月号本紙に掲載しています(https://www.rice.press/